パニック障害 社交不安障害 強迫性障害
パニック障害
パニック障害とは、何の前触れもなく突然パニック発作を起こし、生活に支障が出ている状態のことをいいます。パニック発作には動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えがあります。
激しい苦しさで救急車で病院へ運ばれても内科系の診察では体に異常はなく、場所を移動し時間がたつと症状も嘘のように消えます。
パニック発作は心筋梗塞などの症状にも似ているため、このまま死んでしまうのではないかという恐怖に襲われます。そしてまた発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。とくに、電車やエレベーターの中など閉ざされた空間では、「逃げられない」と感じて外出ができなくなってしまうことがあります。
パニック発作の症状例
- 心臓のドキドキがはっきり感じられるほど強くなる
- 呼吸が速まり、息ができないよう感じがする
- 胸に痛みを感じる
- 冷や汗が出たり、からだがふるえたりする
- めまいやふらつきが起こる
- からだがふわふわしたり、頭がぼんやりする
- 吐き気や腹部などに不快な感じがする
パニック発作の症状はとても強く、このまま死んでしまうのではないかと不安になりますが、たいていは30分~1時間程度で収まると言われています。しかし、繰り返し発作が起こり、月に1回の発作が、進行すると2回、3回と増える傾向にあります。
パニック発作は一般的に女性に多いといわれますが、男性には恥ずかしがって受診しない人が多いため、実際には男性の患者さんもかなり多いと推定されています。
予期不安
パニック発作を繰り返すと、また起こるのではないかという恐怖感をもつようになります。
パニック障害の人の多くが、発作により死んでしまうかもしれないという恐怖や、公共の場での発作の不安を感じています。このような予期不安から、精神的に落ち込む状態が続き、うつ状態になる人もいます。
広場恐怖
予期不安がエスカレートし、自分が発作を起こした場所に恐怖感をもつようになるのが広場恐怖です。以前発作を起こした場所や、人が大勢いる場所、発作が起きた時にすぐに助けを得られない場所に不安や恐怖を覚えます。
電車やバスの車内で発作を起こしたために、乗り物を避けるようになったり、デパートで発作を起こし、デパートに買い物に行けなくなる症状の人もいます。
広場恐怖がさらに進行すると、外出ができなくなり、仕事や日常の買い物にも行けず、家に引きこもるケースもみられます。
パニック障害の治療
パニック症の治療には、薬と認知行動療法を用います。
薬はうつ病に使われる抗うつ薬を長く飲んだり、抗不安薬を症状が出た時に不安を和らげるために飲んだりします。
認知行動療法は、臨床心理士や公認心理師と話をし、不安を強める考え方や行動パターンを探し、バランスのとれた考え方や行動に変え、不安を和らげる治療法です。
社交不安障害
ある特定の状況や人前で何かをする時に、緊張感が高まって不安や恐怖を感じ、次第にそのような場面を避けるようになる病気です。
人から注目されるような場面や状況に対して強い不安や恐怖を感じ、その不安や恐怖が大きくなり、日常生活に支障が出ます。
10人に1~2人がかかると言われるほどポピュラーな疾患でもあります。
社交不安障害の症状例
- 人前に出ると緊張感が高まり、顔が赤くなる
- 緊張により発汗し、ハンカチなどを持たないと落ち着かない
- 周囲の視線が気になり、恐怖や震え、めまいなどを感じる
- 自分に対する他人の評価に強い不安を感じる
- 結婚式の受付など、人前で字を書こうとすると手がふるえる
- 人前に出るとすぐに顔が真っ赤になったり、大量の汗をかいたりする
- オフィスなどで電話をするときに、不安になったり、怖くなったりする
- 大勢の人の前でのスピーチや、会議で発言することができない
社交不安障害の治療
社会不安障害の治療は、パニック障害の治療と同様に薬と認知行動療法を用います。両方を併用すると治療効果が高いといわれています。
具体的には自分の行為が周囲の人に不信感を持たれているのかを再考し、実際に確認することで不安や恐怖を解消するなどの方法があります。
強迫性障害
日常生活に支障がでるほどの強い不安やこだわりがでる疾患です。
例えば、細菌が気になってずっと手を洗ってしまう、玄関の鍵をかけ忘れた気がして何度も家に戻る、など、強迫観念に基づいた行動を繰り返します。
明らかに度を越した不安やこだわりがあるのが特徴ですが、病気だと気がつかず日常に不便を抱えたまま過ごしている人も多いといわれています。
生活上の機能障害をもたらす10大疾患の一つで、50人から100人に1人がかかる病気と言われています。うつ病をはじめとする他の精神障害を併発していることもあります。
強迫性障害の症状例
〈安全に関するもの〉
- 家を出るときに鍵をかけたか何度も確認をする
- ストーブやコンロなど火の消し忘れがないか不安になり何度も家に戻り確認をする
- 自分の行為が安全であったか常に疑いを持ち、確認をしないと気が済まなくなる
〈汚染に関するもの〉
- トイレに行った後何度も手を洗う
- 電車のつり革や手すりを触った後、菌に汚染されたのではないかと不安になる
- 何度も手を洗ったり長時間お風呂に入ったりする
〈他人を傷つける行為に関するもの〉
- 車の運転中、タイヤで何かをひいたりすると人を引いたのではないかと不安になり、その場所に戻って確認をする
- 自分の行為が他人を傷つけてはいないか常に不安にさいなまれる
〈順序や数字に関するもの〉
- 服を着るときに必ず決められた順序で行わないといけないと思う
- 順序を間違えてはいけないと思い、間違えた場合は最初からやり直す
- 特定の数字を不吉に感じ、その数字を避けようとする
- 左右対称でないといけないと思い、配置にとてもこだわる
強迫性障害の治療
パニック障害、社交不安障害同様、薬と認知行動療法を用います。
強迫性障害の方の多くは、強迫症状や抑うつ、強い不安感があるので、まず抗うつ薬で状態を安定させてから、認知行動療法に入るのが一般的です。
うつ病よりも高用量で、長期間の服薬が必要です。 最初は少量から始め、薬との相性を見ながら服薬量を増やしていきます。
パニック障害 社交不安障害 強迫性障害を含む「不安障害」の原因
パニック障害、社交不安障害、強迫性障害はいずれも「不安障害」の一部として扱われます。不安障害は、精神的な不安から、こころと体に様々な不快な変化が起きるものです。
発症の原因は完全には分かっていませんが、遺伝的な要因(不安症の家族歴など)、環境(外傷的出来事の経験やストレスなど)、重要な人間関係の破綻や生命を脅かす災害への遭遇など、強いストレスが引き金になることがあります。