電気痙攣療法(ECT)

修正型電気痙攣療法(mECT:modified Electro Convulsive Therapy)とは

電気けいれん療法は、1934年にハンガリーの精神科医が統合失調症の患者に対してはじめて行いました。以後、この治療はその有効性から長年施行され続け、安全性の面でも改良されています。現在では、麻酔科医師による全身麻酔下で、サイマトロンという高度管理医療機器を使用して頭部を約8秒電気刺激します。それにより人為的にけいれん発作を起こし、脳機能を回復させます。全身の筋肉を緩める薬(筋弛緩薬)も使用しますので、実際には身体のけいれん発作は最小限度に抑えられます。この治療は当院では週に2回のペースで、1クールあたり8回から12回の通電を行います。通電回数は、患者様によって異なりますので、その都度有効性を見ながら専門的な精神科医が判断いたします。薬物療法や心理療法に比べて、有効性が高いこと、効果が速く現れることが特徴です。

修正型電気痙攣療法はどんな病気やどんな人に効きますか?

適応疾患

  • 緊張(からだのこわばり)や混乱などが強いカタトニア(緊張病症候群)の方
  • うつ病
  • 双極性障害(躁状態、うつ状態)
  • 統合失調症
  • パーキンソン病
  • 慢性疼痛  など

適応

  • 自殺の危険や身体的に重篤で、迅速かつ確実な改善が必要な方
  • 薬剤の副作用が出やすく、十分な薬物療法ができない方
  • 十分な薬物療法を行っても改善が得られない方
  • 昏迷状態(極度に緊張や困惑が強く、意思疎通が取れない状態)で、食事などもとれず、早急に改善を要する方
  • 以前に修正型電気痙攣療法が有効であった方
  • 患者様の希望

修正型電気痙攣療法の手順について

  • ①治療前日の午後9時以降は食止めをし、水分は少量であれば治療2時間前まで摂取可能です。
  • ②治療当日、ご自身の病室で朝点滴をします。
  • ③ECT治療室に移動します。
  • ④血圧、心電図などのモニターをつけます。
  • ⑤通電用のシールをつけていきます。
  • ⑥酸素を吸入します。
  • ⑦麻酔薬を点滴から注入し、患者様は入眠します。
  • ⑧筋肉を緩める薬(筋弛緩薬)を点滴から注入します。
  • ⑨ECTの治療器(サイマトロン)から8秒間電気を流します。
  • ⑩患者様は徐々に麻酔から覚めます。
  • ⑪リカバリールームで意識、血圧、呼吸状態などを十分に確認して、お部屋に戻ります。

修正型電気痙攣療法の安全性について

修正型電気痙攣療法の死亡率は低く、治療回数5万回~8万回に1回程度と推測され、安全性が高い治療といえます。ほとんどが身体合併症や麻酔に関連した事故であり、ECT自体によるものはまれです。主な死因は心血管系合併症と考えられています。
安全に治療を行うために、修正型電気痙攣療法実施前には、血液検査、胸腹部レントゲン、頭部CT(頭部MRI)、心電図などの身体的な検査を行います。検査で異常がある場合には、当院の内科医師と協議するか、より専門的な医療機関へ受診して電気痙攣療法の施行が可能かどうか意見を求めることがあります。また、当院ではECT講習会に参加し、ECT実務者委員会に承認された専門的な医師が、修正型電気痙攣療法を施行いたします。ECT室では、麻酔科医師1名、精神科医師2名~3名、ECTナース2名~3名が協力しながらECT治療を施行します。

修正型電気痙攣療法の副作用について

  • 通電直後には、頻脈や血圧上昇などがほとんど全例にありますが、数分で消失します。まれに、発作後せん妄が起こることがありますが、精神科医師が適切に対応します。
  • 麻酔から覚めた後は、物忘れが出ることがありますが、通常治療終了後4週間程度で回復します。頭痛や筋肉痛が出る人もいますが、一時的なものですので適宜鎮痛剤などで対応いたします。

修正型電気痙攣療法に対する同意の撤回について

修正型電気痙攣療法の同意はいつでも撤回可能です。ECT治療を中止後も、薬物療法や心理療法を行いながら、治療を続けます。

修正型電気痙攣療法を他院の先生にすすめられたのですが、どうしたらよいですか?

主治医の先生に紹介状を書いていただき、当院外来受診時に紹介状を持参してください。紹介状の情報と問診により、外来担当医が適応などを判断いたします。また、患者様のご希望がある場合にも適応となりますので、外来担当医にご相談ください。リスクとベネフィットをお伝えいたします。