第44回日本作業療法学会で発表いたしました。

みなさんこんにちわ。久喜すずのき病院精神科作業療法です。
先日第44回日本作業療法学会がありました。
そこで、『当院における服薬教室と退院パスポートの試み』という演題で発表させていただきました。
ここにそこで発表させていただいた内容についてupしたいと思います。



初めに 当院では平成19年10月頃より,「退院パスポート制度」を導入し,平成20年2月より,「退院に向けての服薬教室」を行ってきました。今回の発表では退院者の再入院率を調べる事で、この2つの試みの意義を検討しました。

当院の概要についてご説明させていただきます。当院は精神科単科442床の病院です。救急入院料病棟や急性期の治療病棟を多く有し、精神科の急性期治療に力を入れています。平均在院日数は65日と短いです。

退院パスポートについてご説明いたします。これは、入院から退院までの流れを患者様にわかりやすく説明するものです。認知症病棟の患者様を除き、入院患者様全員にお渡ししています。

首からさげられるカード状のものを患者様にお渡ししています。

中は、入院時の説明、パスポートの説明、それからOTの説明、そして、服薬教室、院内外出、院外外出、外泊許可など入院から退院するまでの流れがわかるようになっています。一つ一つ、説明が終わったら、本人がサインし、説明をしたスタッフがサインをするという風に使っています。そして、この入院から退院までの流れの中に服薬教室を入れました。

当院では、院内外出の許可が出た後に、OTの方から服薬教室に参加するようにお声かけしています。なぜ、服薬教室を外出許可の後にしたかというと、プログラムを病棟の外で行う事と、外出許可が出る頃には、患者様は症状が落ち着いてきている方が多いという事で、外出許可の後に服薬教室に参加するという流れにしました。

次に服薬教室ですが、これは薬剤師と作業療法士で週1回行っています。薬についての基本的な説明をしています.1回完結型のプログラムで,入院患者様全員が退院するまでに必ず1度参加していただく事を目指しています。内容は、このピンクの四角の中にあるような事をお伝えしています。

そして今回、この服薬教室と退院パスポートの意義について考えるために、H20年3月から1年間の間に退院した方の調査をしました。
1年間に退院した方のうち、入院期間内に服薬教室に参加して退院した方をA群、そして入院中服薬教室に参加せずに退院した方をB群と2群に分け、その後の再入院率を調べました。

A群とB群の3ヵ月後の再入院率を調べてみた所、A群は9.31% B群は15.68%という結果になり、6ヶ月後の再入院率は、A群17.82%、B群23.42%となり、どちらも服薬教室に参加したA群の方のほうが、再入院する方が少ないという結果になりました。

この結果に関して次の2点を考察しました。まず1点目は服薬教室の参加の有無は、退院パスポートがうまく進んだかどうかのいい指標になった。 2点目はパスポートの流れにうまく治療が乗った方は再入院する事が少なかった。 という事です。
まず一点目についてご説明しますと、A群とB群では、入院生活の過ごし方に随分差があったのではないかという事を考察しました。

A群の患者様は入院生活全般において、治療への動機付けが高かった方で、退院パスポートの意図をよく理解していました。外出許可が出たら次は服薬教室に参加するという事を理解して、自ら参加する方や、OTが服薬教室の参加を促すとすんなりと受け入れる方が多かったです。また症状がある程度落ち着いて外出できるくらいにならないと参加できませんので、入院治療である程度症状が安定した方などの特徴がありました。

一方B群の患者様は外出許可が出ても、服薬教室の参加を拒み続けて退院される方や

症状が安定せず、外出許可がでないまま、服薬教室に参加する事もなく退院に至った方。

入院してすぐ退院される方 など

このようにB群の患者様は、パスポートは導入されるが、パスポートにのっとった治療を受けないまま退院される方といった特徴がありました。

したがって服薬教室に参加できたという事は、治療の同意や、症状の安定、などの点で、入院治療がうまく進んだ方と見ることができるのではないかと考察しました。

その上で、A群のように退院ポスポートに基づいた治療に乗れた患者様は再入院する方少なかったという事で、入院初期から退院パスポートにより入院から退院までの治療の見通しを示した事が、A群にとっては治療への動機付けになり、服薬の重要性をよく理解し、退院後の再発予防につながったのではないかと考えました。

今後の課題としては、B群のような症状が安定しないまま退院する方、入院から退院するまで自分の病気や薬の必要性を認めず、治療同意ができず、服薬教室に参加することもなく退院する方らへどのようにアプローチしていくかが課題であると考えています。
また、退院パスポートが外出許可まで進んだ方の中で、服薬教室に参加した方、参加しなかった方の2群に分け、服薬教室自体の効果を検討する必要もあると考えました。
以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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