第43回日本作業療法学会にて ポスター発表してきました。

第43回日本作業療法学会にてポスター発表をしてきました。
発表内容は、『精神科病院における服薬教室の意義と効果に関する考察』という発表です。
内容は以下の通りです。
当院では、平成20年2月より作業療法士と薬剤師にて「退院に向けての服薬教室」を行ってきました。
この研究ではこのプログラムの意義と効果について考察しました。
当院は急性期の患者様の多い精神科単科の病院です。


当院は、初発の方や初回入院の方が多く,毎月の退院者の数も多いために、個別の薬剤管理指導を、全員の患者様にできるだけのマンパワーが不足していました。そのため、十分に服薬の意義を説明される機会の無いまま退院される患者様が多く、初回入院の方の中には、退院後も通院を続けて薬を飲まなくてはいけない事さえも知らない方がいらっしゃるような状況でした。
一方OTとしては、現在当院でクリニカルパスを作っている所であり、平均在院日数65日の中でOTとしてどのような役割を担っていくかを明確にしていく課題がありました。そこで、服薬教室を入院リハビリテーションの中にうまく位置づけする事ができれば、良いのではないかと思い、薬剤師と協力してこのプログラムを立ち上げることとなりました。
始める上で、お互いに目標とした事は、最低限の薬の知識を、入院期間内にすべての患者様に提供するという事を目標にしました。
ここでいう最低限の薬の知識とは
①自分の飲んでいる薬をまずは知るという事と、
②退院後も薬を飲み続けましょう
③困った事は何でも主治医に聞いてください
という事にしました。

プログラムは薬剤師と作業療法士で週1回、1回完結型として実施しました。さらに上の表のように入院から退院するまでの流れの中で必ず一度参加できるようにシステム作りをしました。外出許可を、回復の目安の一つの基準としてとらえて、
服薬教室に参加するタイミングを職員にも患者様にもわかりやすくしました。外出許可が出た時に、服薬教室に参加するように、担当OTより声かけるようにしました。

このように1年間実施した取り組みを振り返りました。まずは期間中に退院された方の参加率、つまり退院された方がきちんと服薬教室に参加してから、退院されたかどうかについて調べました。当初の目標であった最低限の薬の知識を、入院期間内にすべての患者様に提供するという事がどの程度達成されたのかについて検討しました。さらに期間中の実施記録、アンケート結果、プログラム前後の患者のDAI-10の点数変化、参加者の再入院率を検討することでプログラムの意義と効果について考察しました。

この表は月別の退院者と参加者の表になります。期間中に1251人の方が退院され、そのうち5割の方は入院中にきちんと服薬教室に参加して退院されました。全体では5割ですが、プログラムを運営するにつれて、7割の患者様が退院までに参加できる環境を作る事ができました。
一方で、3割の方は参加されずに退院されました。これはごく短い入院期間の方がいた事や外出許可が出ないまま退院される方がいた事や、参加を拒む方いた事が大きいと考えています。

期間中に参加者の9割が退院しました。ほとんどの方が入院して、外出許可がでたら、服薬教室にでて、退院するという入院リハビリテーションの流れがスムーズに行われたと考えています。その一方で右側の表を見ていただくと、退院者696人のうちの2割弱は再入院しています。その中には断薬、怠薬が理由の方もいる事がわかりました。

左側の表は患者様のアンケート結果です。プログラムの満足度を5段階で患者様に聞きました。7割の方が満足かやや満足、2割5分くらいの方がまあまあと言う結果になっています。右側の表はDAI-10の点数変化の結果です。DAI-10とは患者様の自覚的な服薬体験を評価する質問紙です。点数が高いと患者様が薬に対して肯定的に感じていることを示しています。服薬教室の実施前と実施後で評価してみた所、プラスに変化した方が66人、変化のなかった方が54人、マイナスに変化した方が32人という結果になりました。

考察です。
服薬教室は入院リハビリテーションの流れの中にうまく組み込まれました。入院から退院するまでに必ず一度参加できるようなシステムを作った事。外出許可を一つの回復の目安としたことで、服薬教室に参加するタイミングが分かりやすかった事が、うまくいった理由だと考えています。クリニカルパスを作る上で服薬教室が不可欠なものとして職員の理解を得たといれるといえます。
今後の課題としては、多くの患者様に漏れなく参加してただく事を目標としたため、1回限りのプログラムとして行ったが、1回の服薬教室だけでは不十分な方をフォローするようなプログラムやフォローの仕方の検討することです。たとえば会の中でDAI-10の点数の下がってしまった方や、理解の難しい様子であった方のフォローなどです。
また再入院をした方へのより理解を深められるような服薬教室を行うことなども今後の展開として考えられます。前回入院時に受けた服薬教室の内容を踏まえて、2回、3回と続くようなプログラムを行う事も検討していけたらと考えています。
このような内容で発表させていただきました。

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