緑のカーテン

 私の部屋は、二階、南向きで日当り良好だ。良好過ぎて、真夏はまさに灼熱地獄。
部屋の壁から、ベッドから、本から、ありとあらゆるものから昼間溜め込んだ熱が吐き出され、クーラーを使っても、なかなか安眠できない。
 少しでも快適に夏を過ごしたい、でもお金はあまりかけられないと考えた末、いろいろな条件をクリアした解決策が、「緑のカーテン」だったのだ。
 緑のカーテンとは、ベランダや窓の外などに、つる性の植物でできた「カーテン」をかけることで、直射日光をさえぎり、壁や屋根、ベランダの床の蓄熱を抑え、さらに、葉っぱの蒸散作用により熱を奪ってくれる、という聞いているだけでも涼しくなってくる代物だ。
 その上、電気代を抑えられるので「エコ」でもあるし、胡瓜や苦瓜という暑いときにはうれしい副産物まで手に入るのだ。
 「これで快適な夏が過ごせるに違いない!」
 ホームセンターに足繁く通い、大きなプランター、園芸用のネットに土、肝心の野菜と花の苗や種を購入した私は、「カーテン」の効果を信じきっていた。
 
 
 結果としては、残念ながら劇的な涼しさは得られなかった。
 しかし、一日に30cm近く伸びることのあるつる性植物の成長を見守るのは、帰宅してすぐに行う日課といつしかなっていた。
 水遣りを手伝ってくれるだろう母のために植えた朝顔は、毎朝、20輪以上の花を咲かせ、若い実を炒めて食べるのを楽しみに植えたへちまの大きな黄色い花との競演で、私や母の目を楽しませてくれた。もぎたての胡瓜や苦瓜を食べるのも初めての経験だった。
 今年こそは、涼しさの効果も手に入れよう、とプランターの列を二重にして葉っぱの密度を上げる計画を立てている。
 そして、20cmから成長せず萎んでしまったへちまを立派に育て上げ、自家製の「ナーベーラーイリチー」を作るのだ。